カンヌ映画祭

私が39歳になった日にカンヌ映画祭のコンペ出品作品が発表された。
夫が映画関係のため、この発表は毎年我が家では注目している。
もし夫が担当している作品がカンヌに行くことになると、今後映画祭が始まる一ヶ月近くの間、夫は大忙しで休日出勤も当たり前になる。

今年コンペに参加が決まった仏監督はジャック・オディアール、アラン・レネ、ガスパー・ノエ、グザビエ・ジアノリの4人。
通年フランスの作品は3つと決まっているが、今年の4作品は異例。
私の大好きなオディアールとレネが2人とも選ばれていて、少々驚いた。
この2人、もちろん世代もジャンルも違うのだがかなり共通する部分がある。
まあ、今後これらの作家について書く機会が必ずあるだろうから、ここでは非常に簡潔に「大衆受けするインテリ映画」とでも書いておこう。

夫が担当したブリュノ・デュモンの作品は残念ながら落選。
これも意外だった。
カンヌは常連宿のようなもので、来る監督は毎回新作ができるたびにやって来る。
デュモンも常連の一人だ。
確か1998年に『ユマニテ』でグランプリを取り、アマチュア俳優の流行の中心になった作家だ。
『フランドル』でもグランプリを取ったと夫は言っているが、私の記憶にはない。
私は最近の作品は見ていないが、『The Life of Jesus』は歴史に残る名作だと信じている。
やはり映画は芸術なのだと再確認できる(映画と音楽は芸術である前に消耗品だ)。
とにかく作家性の強い映画、フランス語でいうところの「cinéma d’auteur」、日本語で簡単にいえば「インテリで退屈な映画」ということになる。

この「インテリで退屈な映画」こそ多くの日本人にとっての「フランス映画」なわけで、こういったものは是非生き残ってもらわなくてはならない。
しかし昨今のフランス映画の傾向といえば、一にも二にもコメディーである。
純粋に観客動員できるからで芸術性はない。
そして、客の入らない「インテリで退屈な映画」を創り続けるのが難しくなっている。
一昨年(だったと思う)セザール最優秀作品を受賞したパスカル・フェランもそんな困難に会い、何年もの苦闘の末受賞作品を仕上げたとのこと。

カンヌ映画祭はとにかく話題性がある。
世界のメディアが注目する祭典だ。
だからこそ、フランス映画文化である「インテリで退屈な映画」を大切にしてほしいと思う。

カンヌ映画祭は5月13日から24日まで。
カナル・プリュスで19時から21時頃、映画祭の様子を生中継で見れます。

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